透明図

「すぅごいじゃん!藤橋君。かっこよかったよ!」

藤橋君が戻って来た時、私は必要以上にオーバーなリアクションをとって褒めたたえてしまった。

不思議なくらいに甲高い声がでた。

「うん、うん。やるねぇ、藤橋君。すごいすごい。」
サキもそれにあわせる。

「いや、あんなの普通だよ。たいしたことじゃ…。」

藤橋君が当たり前のように謙遜で返す。

「たいしたことだよ〜。すごいって〜。」

「ねぇ。」

私とサキの二人に、交互に褒め続けたせいか、藤橋君はちょっと困り顔でかわいらしい。

「なぁ、行こうぜ。つぎつぎ回らないと日が暮れちまうって。」

照れたようにしながらも、正論を言う。

なんだかそんなふうに照れられてしまうと、ホントにかわいらしくなってしまった。

「よーし、行こうかぁ!」
私は手を二人の前に差し出した。

イヤイヤぁと笑いながらもサキが手をだした。

藤橋君はなんとなく手を浮かせるようにしながらも、手の平をサキの甲に重ねる。

相変わらず照れながら。

「おー!」

私たちは雑然とした店内で、小さく声を響かせた。

ちょっとだけ周囲の視線が私たちに突き刺さった。


うーん、何かいい感じじゃない?