透明図

「ねぇねぇ、どこからまわろっか〜?」

サキが楽しそうに私に尋ねる。

私とサキと藤橋君の三人は、ノラとであったあの広い公園のそばにあるマックでお茶をしながら計画を再三練っていた。

まずは、と言っても特にあてがあるわけでもなかった。

とりあえず、ビラは四十枚程しかない。

なるべく誰かの目にふれやすいようカラーを大量に使い、それをフルカラーでコピーしたものだ。

それとガムテープが二組分、テーブルの上に転がっていた。

後はこれを人目のつく所に張ってまわればいい。

そんな感じで漠然と考えていたけれど、いざ実際に動きだす段階になると少し足がすくんだ。


途中まではうまくいったのだけど…。

どうしても、これを一人で電柱に張ったり、誰かに手渡したり、そんな勇気がもてなかった。

でも、何かしなきゃ。

そんな気持ちばかりが強く焦るが、結局どこにも踏み出せなかった。

そんな時、男の子がいると不思議と頼りになった。

「オレがお店に交渉してくるよ」

そんなことを言ってあっという間にレジで店長を呼んだと思うと、泣き落としたり、笑ったりとか、その顔からいろんな表情を作り出してはなんとか交渉をまとめてしまった。

私たちはそれを遠くから、はた目にみていた。

やるなぁ、藤橋君。

私ではなくて、サキが思わず感嘆の声をあげる。

私はその声に思わずドキリとする。

「え!?な、なんでなんで!あんなの全然たいしたことないって。」

そしてなぜか私が否定をしてしまった。

藤橋君には聞こえないように、そして慌てるように。
そしてふと考え込む。

あれ、私って何がしたいのだろう。

サキはキョトンとした目で私を見つめていた。

私はもっともっと慌ててしまった。

とりあえず、何か言葉を探さなくっちゃ…。