透明図

翌日の昼休み、屋上で、誰かが大きな声で言い合っていた。

「これじゃ、わかんねぇって!」

「ウソ!そんなことないもん!」

私と、藤橋君が一枚のコピー用紙を挟んでにらみっこしてるみたいだった。

前日、藤橋君の提案を受けていくつかの事を話しあって決めた。

その時わかったのは、私はノラの行きそうな場所をほとんど知らないということ、それぐらいだった。

これじゃ確かに探しようがない。

他の手段としては、ビラを作って街中に張っておくとか、後は探偵を雇うとかそんなくらいしか思い付かない。

でも探偵って、そんなお金が無いことぐらいはわかりきっていたし、自然と手段は限られていた。

結局決まったのは次のこと。

まずノラのことをよく知っていて、絵が得意な私がビラを作る。

それを大量にコピーして、私と藤橋君が別々に張りまわること。

勉強もちゃんとやること。

それぐらいだった。

今言い合いになってるのは、ビラに載せなきゃならないノラの姿についてだった。

「こんな猫、いるわけないだろ!」

「いるよ!ノラはこんな感じなの。」

藤橋君はイマイチ納得してくれない。

「だってこんなマンガみたいに大きな目をした猫いるわけないじゃんか。それにほっぺたのバッテン傷なんてあったか?」

「もう、何言ってんの!あるよ、バッテン傷。」

私は一つ呼吸を整えてから藤橋君の目を見据えて言った。

「だってそっちのほうがカワイイでしょ!」

藤橋君は、思わず頭を抱えてしまった。

え、なんでなんで??