私はふと気になって、藤橋君の心の設計図をのぞきこんだ。

ぶわっと、黒い霧のようなものが辺りに漂いはじめ、私は思わず顔を背けたくなる。

彼の設計図は、今もあの時と変わらぬまま暗く沈み、痛々しさを感じさせる。

でも、今はそれもあまり気にならない。

そんな不思議な勇気が私を支えた。

藤橋君は、空を見上げる私を不思議そうな顔でみつめていた。

「ねぇ、今度またその話を聞かせてよ。」

「あぁ。」

私が声をかけると、藤橋君の心をギシギシと蝕んでいたイバラのような鎖のトゲが、緩くなってゆくようだった。

それを見るとやっぱり思ってしまう。

君は、苦しんでいたんだねと。

私は、次第に藤橋君の心の傷跡を直視できるようになってきた。

これは私の進歩なのだろうか?