透明図

「ねぇ、どうゆうことなのかな。」

私はこれ以上何を聞きたいのかいよいよわからなくなってきた。

おそらく藤橋君が何を言ったとしても、私はそれを信じれないだろうし、かと言って疑うこともできないだろう。

ただ、聞いてあげることが少しでも彼の慰めにでもなるのだろうか。

「んー、悪いな。意味のわかんないことばっか言ってさ。」

少しだけ、落ち着きを取り戻したように幾分はっきりとした声で藤橋君がしゃべった。

「いいよ。ぜんぜん。でも意外だな。藤橋君がそんな顔するなんて。」

「あぁ、そうかな。」

「うん。藤橋君てさ、もっとなんてゆうかいつも軽かったりするじゃない。だからやっぱり意外かな。ごめんね。」

藤橋君が、かすかにはにかむ。

「前にそいつとずっと話してたろ？」

藤橋君は、ノラを指差す。
ノラは聞こえているのだろうけど、そしらぬ顔を通す。

「なんか、そいつと一生懸命に話しているお前みてたらさ、俺のこんな話もちゃんと聞いてくれるかな。そう思ったんだ。」

藤橋君が少し笑う。

私もそれにあわせて笑みを作る。

「私、変な女の子だからね。」

藤橋君はまた笑った。

少しだけ、謎がとけた気がした。

どうして藤橋君が、私に話しかけてきたのか。

きっと、誰かに聞いて欲しかったんだ。

自分の苦しみ、辛さ。そうゆうことをきっと誰かに知って欲しかったのだ。

あぁ、この人も人間なんだ。悩んで、苦しんで。

私は、少しほっとした。

日は次第に暮れはじめてきた。