透明図

一日を無為に過ごした私は、帰り際になってようやく中間テストが二週間後に迫っているのを知った。

いつもなら慌てふためく事が多いけれど、今回ばかりはあまりそんな心境にもならなかった。

これは、私の中の進歩なのだろうか?

たぶん私の中で学校の勉強以外の比重が膨らんできたからなのだろうと冷静に答えをだしたが、それは結局なんの助けにもならないことに気付くと、いつものように焦ってきてしまった。

はぁ、勉強やんないとなあ…。

私に心を見ることはできても、そこから答えを知ることはできない。

重たくなってしまった気をもちながら家に帰ると、急にノラの顔が見たくなった。

私の頭の中のノラは、のんきにお昼寝をしていた。

私もあんなに気楽に生きられたらなぁ。

ノラを思い出すうちに、ノラの声、ノラの顔が私に溢れてきた。

ノラに会えば、少し元気になれるかな。聞かなきゃならないこともあるしね。

二日前にノラが話してた事を思い出したら、がぜんノラに会わなきゃという気になった。

今日もあそこにいるかなぁ。

私はなんだか弾み始めた自分の気持ちを押さえるように胸に手を当てて、自転車に飛び乗った。

暑い日差しも、一時の勢いを失い和らいでいた。

自転車に乗って切る風が少しだけ冷たく私の体をまとう。

自転車は、心地のよいうねりをあげて軽やかに坂道を急いだ。