snow×white

駅から帰る人の群れに逆らいながらフラフラと歩く。

まだかすかに残る夏の匂い。

雨はもう上がっていた。



あたしは小さな公園を見つけると、まっすぐ水飲み場に向かった。

蛇口をひねりゴクゴクと勢いよく水を飲む。


普段は少し抵抗を覚える水飲み場の水だが、今日はそれが命の水に思えるほどおいしい。


「ぷっはー!!

生き返ったー!!」


デカイ声で独り言を言いながら口元の水を手で拭い、目の前にあるベンチに腰かけた。




ヤスってさぁ、彼女いるよね。

つい1時間前に聞いたじゃん。

あたしってもしかしてすっごいバカなんじゃない…?




亮平のことも思い出していた。

なにも手につかず泣いていた日々。

もう1度あの試練を与えられたら、あたしは耐える自信がない。



そんな思いを他の人に味あわせちゃダメだよね。


ヤスには愛する人がいる。

その人もヤスを愛している。


それだけのこと。

あたしが入れる隙なんてないよ。


あんまり深く考えるのやめよう。

あんまり重く考えるのやめよう。


そう思いながらまた涙があふれた。