「嫌いになっちまえよ。」
黒崎はいつもは見せない真剣な顔で言った。

「え・・・？」
あたしは驚いて、思わず聞き返した。



「あんな奴、さっさと嫌いになっちまえ。」
黒崎はそう言うとシャツの袖であたしの涙を何度も拭ってくれた。


「・・・あり・・・がと・・・・。」
あたしはもう泣き止んでいた。


もう高坂さんのことなんかどうでもよかった。
そんなことより、この最悪執事のこんな一面を見れたことに驚いて・・・・あたしはいつまでも唖然としていた。


「いつまでポカーンと大口あけてんだ。」
黒崎はまたいつもの憎まれ口をたたくと、背を向けて歩き出した。


「あ・・・うん。」

あたしはなんだか嬉しくなって、へへっと笑った。



「帰るぞ。お嬢様。」
黒崎は振り返ってくすっと笑った。
「ハイ。」
あたしも微笑み返した。