結局、美咲とはあのままだった。
電話にも出てくれず、メールは僕が苦手なため、連絡が取れないまま今日がきた。
美咲は今日、引っ越して行く。


「…本当にいいのかよ」

「なにが?」

なにが、なんてわかっているのに。
わかりたくないし、わからなくていい。
呆れた顔をされたけど気にしない。

「ばっか、矢田美咲のことだろ」

「……いいんだ、もう」

「逃げてるだけじゃねぇか」

「…わかんねーよ」

自分が本当に美咲を好きなのか。
離れたら気持ちもなくなるんじゃないか。
不安なんてものではない。
ただ、どうしようもなく悲しくなる。


「…しばらく考えてみたら?佐倉くんの好きな絵でも描いて、ゆっくり考えてみなよ」


早苗ちゃんの言葉に、泣きたくなった。
まだ僕は考えてもいいのだろうか。
美咲のことを、考えてもいいのだろうか。

その答えをもらえた気がした。