―バレンタイン当日―

AM8:30
私は、学校の体育館の二階にいた。

ここから、試合の様子が見下ろせる。


そして視線の先には……朝倉拓――。

相変わらず、冷たい横顔。

時たま友達と笑いあうけど、ほとんど無表情。


でも…なんでだろう。

見れば見るほど、好きになっちゃう。

そう。あの日から―――――


新入生の入学式。

私は二年生の入学式委員で、忙しく走り回っていた。

「えっと…あっ!マイクが足りないっっそれにあれも!急いで取りに行かなくちゃ!」

足りないものを思い出して方向転換した時だった。

ドンッッ

「いっっ!」

「ってぇ〜〜。」

「!ごっ、ごめんなさいっ。」

胸に花を付けた新入生にぶつかってしまった。

それが、朝倉拓だった。

「別に。」

「でもっ!怪我ない?!」

「大丈夫だから…。アンタは?」

「え、私?私は頑丈だから大丈夫っ!」


私がそう言うと、それまで無表情だった朝倉拓が、一瞬だけフッと笑って立ち上がった。

そして――

「はい。」

手をさしのばして来た。

私はそれを掴んで立ち上がった。

「あ、ありがとう。」

「別に。」

そう言って、体育館の方へ行ってしまった。

「〜〜〜っ////」

多分、その時は顔が真っ赤だったと思う。

だって、恋をしてしまったから。


私の、初恋―――――