「やっと終わったー」

春、四月も終わりかけの教室で、わたしは一日が終わったことに安堵して机の上につっぷした。

授業が始まったばかりだというのに、わたしの頭は既に自分の能力の限界を超えていた。

だって、授業がむずかしすぎる。

高校の勉強って、こんなにいきなり難しくなるのかな。
それもと、学校の選択が間違った?

わたし、水城陽菜は、家から一番近いという理由で今の女子高を選んだ。
ちょっとレベルが高いなとは思ったが、遠くまで通えない事情があったため、仕方がなかったのだ。

でも、今ではそれを後悔している。
あと三年、ここで過ごすことを考えたら、わたしの気持は滅入りそうだった。


「ひーな。大丈夫?」

わたしの机までやってきたのは、親友の涼子。

この学校を選んで唯一よかったと言える点は、この涼子が同じクラスだったということだけだ。

涼子は小学校からの幼馴染で、一番の仲良し。
涼子がいるだけで、気持ちが明るくなれる。

「りょーこちゃーん。だめー。授業わかんなーい」

「ちょっとー。今からそんな事言ってんの?」

涼子は、昔から頭がよかった。
しかも美人。
早くも頭角を現して、学級委員に選ばれたくらい、なんだか違う雰囲気をまとっている。


「ねーねー、すごいかっこいい子が校門にいるよ!」

そのとき、一人のクラスメイトが教室に駆け込んできた。

「中学生っぽいんだけど、めっちゃかっこいい! 見に行こうよ」

教室が、とたんにあわただしくなった。

「へー。ねえ、ひな。わたしたちも行ってみよう」

「えー」

わたしは興味がない。

「いいじゃない。帰りついで。早く支度して」

「はーい」

わたしはしぶしぶ、起き上った。