「アル、悔しいか?…俺だって悔しいよ。だが、必ず…じきにジークは帰ってくる。俺はアイツの言葉と剣の腕を信じる。だから今は怺えてくれ。」

「…。」

「アル…アルフォンス。」

「…わかった…。」

アルはようやく顔をあげた。
その表情は沈み、瞳は屈辱と怒り、そして悲しみの色を宿していた。
俺は、彼が馬に跨るのを確認するとシールズを抱えたまま愛馬に鞭を入れた。
馬が駆けるたびにシールズの金髪が揺れる。
彼の身体から漂う汗と血の混じり合った匂いが鼻腔を掠める。


(シールズ…辛いだろうが暫く辛抱してくれ。出来るだけ早く魔都に帰って休ませてやるからな。)

背中にアルの愛馬「十六夜」の蹄の音を聞きながら、俺はギリギリと奥歯を噛んだ。