「くっ…。」 そこまで言われても、俺は何も言い返すことが出来なかった。 その頃の俺は、僅かなお金と身の回り品を持ち、家を飛び出してから間もなく、着の身着のままの生活をしてきた。 とはいっても…それは蓄えに頼る生活だった。 当然、持ち合わせはすぐに底をついた。 そうなれば、世の中の仕組みなど知らない世間知らずの俺は食う物さえままならぬ日々を過ごす羽目になった。 だから、クラインの指摘通り往来で破落戸に絡まれても、殴り返すことも出来ずただ地に倒れ身を縮め、悔し涙を流すだけだったのだ。