寿老人は杖で防ぐのがやっとのようだ。
刀とぶつかり合う、甲高い音が響き続ける。


「口ほどにもないっすね。さっきから防御だけじゃ、勝負は見えてるっすよ!!」


布袋は両手で円をかくように回しながら、何かをブツブツと唱え始める。
すると、空を斬った所から、突如竜巻が現れ、寿老人を囲った。


「す、凄い……」


私は必死で息を整え、胸を押さえながら、その渦をじっと見つめる。


「これで最期っす!!」


布袋が双剣を構え、一直線に渦に向かって走って行く。もはや、その姿を目でとらえる事は出来ない。
風の如く、駆け抜けると、渦の中へ光と共に姿が消える。


「フン。少しは出来るようだな。だが、お前の動きなど、この私にはお見通しですよ?」


寿老人が、カツンと杖を突いた。
途端にドーム状の硬いシールドが彼を包み、竜巻は消え、布袋はもの凄い速さではじき返されると、私の数メートル後ろに倒れ落ちた。


「ほ、布袋……!!」


「くそ、身体が、動かね……」


布袋は電気に感電でもしたかのように、身体を小刻みに震わせている。


私は、痛みを押し殺すように、気力を振り絞り立ちあがる。


「……どうして?あなた達は、仲間、なんでしょ……?何で、こんな事……」


「仲間……だと?そうだな……それも今は昔の話だ。仲間だから、同じでいないといけないのか?奴らと同じ道を選ばなければ、ならないのか?……そんな事を、誰が決めた!!」


寿老人が鋭い目つきで私を睨む。
見たこともない程の、怒りを宿した瞳に、私の気迫は押し戻される



「たかが人間ごときに、我々の気持ちなど、わかってたまるか!!」


寿老人が、一歩、また一歩と距離を縮める。


「……!!」


「さ、咲……逃げろ!!」


そして、私の目の前に来ると、闇を宿したその杖で、私の身体を引き寄せた。