「初めて水に降りる雪を見たのは、あのパーティの夜だった」

「あの?」

「ぼくはとても幸せな気持ちで、その中にいたんだ。真白な花のように、僕の周りをひらひらしていた。……ちょうど、こんな風に」


 颯太の大きな手が空に突き出されると、風が起こって、白い花は舞を見せた。

彼は静止したまま、目だけを微かに動かした。

瞬きではなく、何かを見ようと目を凝らしたようだったけれど、闇を雪が落ちているだけだ。

海へと向かって。