階段の途中で突っ立ってる私に、遅れて来た沙織が。
「凜花!何やってんの?」
「あぁ…何でもない…」
そう言って沙織と階段を下りる。
「凜花ちゃーん!」
って、廊下の端で手を振ってるのは幸樹君。
陵弥の従弟で、私にちょっかい出したりもしてた時もあったけど。
今はすっかり弟みたい。
「可愛い…」
って沙織。
幸樹君の子犬みたいな笑顔に、沙織と2人で手を振った。
幸樹君だって人気者な訳で。
そんな彼に手なんか振っちゃう私と沙織も目立っちゃって…
みんな見る訳よ。
その中にあの女の子もいて。
目がバチッと合った。
私を見る目… 表情を変えず、ただ通り過ぎる私を追う様に見て。
沙織が。
「何あの娘?」
「…あの娘…陵弥の事が好きなんだよ…」
そう言うと沙織は振り返って見てたけど…
私は振り返らなかった。
あの娘と目合わせたくない…
あの娘が陵弥を好きって知ってしまったから…

