「良かったじゃんかぁ~嬉しいべ?」
舞が、桃歌の耳元で囁く。
 舞というのは、小学校の頃からの友達で、いつでも桃歌の味方でいてくれる、桃歌の一番の理解者。
「五十嵐、絶対桃歌のこと好きだよぉ」
その舞の横で、中学校に入ってから、席が近いことがきっかけで友達になった未久が、ニヤニヤしている。
「えっ・・・」
桃歌の頭の中で、未久の言った言葉が連続再生される。

・・・・五十嵐・・絶対・・桃歌のこと・・・・・

―――本当に、そうだったらイイのにな・・。
桃歌は、心の底からそう思いながらも、すぐにそのありえない想像を頭の中から消し去った。
そして、舞と未久に思い切り笑顔を作って見せた。
「ありえないよ~☆」
 本当は、“ありえない”という現実が、悲しかった。
それなのに“ありえないよ”言ってしまったのは、その現実をどうしても認めなきゃいけないんだという気持ちと、ただ単純に、そんなわけないと思ったからだった。