パパって、本当にマイペース。
一歩この部屋に入ってきただけで、空気をすべて持って行っちゃうんだもの。

お陰で、涙も乾いちゃった。

「ちょっと見た目良くないけど、包帯は外しておいたほうがいい。
ガーゼの上に、ネットつけておいて。
水を使うときは、ゴム手袋でも使えばいい。
後、治りかけは絶対に痒くなるけど、掻いちゃ駄目。
分かった?」

一息でそれだけ言うと、真っ直ぐにわたしの目を見つめる。
頷く以外の選択肢、あるのかしら?
ちょっと、思いつかないんだけど。

こくりと頷いたわたしに満足したのか、パパがくしゃりと人の頭を撫でてから
「俺もチョコ食いたい!」
と、清水に強請る。
「普通に、夕食を召し上がられてはいかがですか?」
清水がまっとうな提案をすると、子供のように唇を尖らせ
「じゃあ、茶漬。
ついでに、ウィスキーももらえる?」
なんて、リクエストしてる。

「ご馳走様!とっても美味しかったわ」

わたしは片付けようかどうしようか躊躇している清水にそう言った。
その間に、パパはお兄ちゃんと話していた。

「ね、最近は本当に便利な世の中になったよねぇ」

なんて、ケータイを取り出して感心しきりだ。