「犯人、パパは知ってるけど。
それ、本当に知りたい?」
ただいまの一言もなく、独特の節回しでパパの声が聞こえてきた。
わたしは慌ててお兄ちゃんの腕の中から顔をあげる。
「ただいま、お姫様」
ダイニングのドアにもたれて、パパがふわりと笑って見せた。
パパには珍しい、ダークスーツ。
その眼差しは、動物園で仲むつまじくじゃれあう白熊でも眺めるような、お日様のように優しいものだった。
「パパっ。どうやって帰ってきたの?」
わたしは思わず立ち上がる。
「だって、どっかすっごく遠くに居たんでしょう?」
パパがゆっくりとわたしの方へと歩いてきた。
残念だけど、銀組のナンバーツーといわれるパパの本当の行き先は、娘のわたしにすらシークレットなのだ。
多分、きっと。
どこぞの愛人のところにでも行ってるんだわ、っていうのがもっぱらの噂。
もっとも、噂になっているくらいだから事実は違うのかもしれないし。
わかんないけど。
「娘の一大事にはちゃぁんと駆けつけるって決めてるの。
あら、この両手どうしたの?
ちょっと外してもいい?」
「駄目っ。
お兄ちゃんが包帯巻いてくれたんだからっ」
「じゃあ、また明日以降巻いてもらって、ね?
今は、パパに見せてちょうだい」
パパはわたしの返事なんて気にも留めずに勝手に包帯を外している。
それ、本当に知りたい?」
ただいまの一言もなく、独特の節回しでパパの声が聞こえてきた。
わたしは慌ててお兄ちゃんの腕の中から顔をあげる。
「ただいま、お姫様」
ダイニングのドアにもたれて、パパがふわりと笑って見せた。
パパには珍しい、ダークスーツ。
その眼差しは、動物園で仲むつまじくじゃれあう白熊でも眺めるような、お日様のように優しいものだった。
「パパっ。どうやって帰ってきたの?」
わたしは思わず立ち上がる。
「だって、どっかすっごく遠くに居たんでしょう?」
パパがゆっくりとわたしの方へと歩いてきた。
残念だけど、銀組のナンバーツーといわれるパパの本当の行き先は、娘のわたしにすらシークレットなのだ。
多分、きっと。
どこぞの愛人のところにでも行ってるんだわ、っていうのがもっぱらの噂。
もっとも、噂になっているくらいだから事実は違うのかもしれないし。
わかんないけど。
「娘の一大事にはちゃぁんと駆けつけるって決めてるの。
あら、この両手どうしたの?
ちょっと外してもいい?」
「駄目っ。
お兄ちゃんが包帯巻いてくれたんだからっ」
「じゃあ、また明日以降巻いてもらって、ね?
今は、パパに見せてちょうだい」
パパはわたしの返事なんて気にも留めずに勝手に包帯を外している。