足が動かないのは、車から降りた瞬間頬を打たれた谷田陸の姿が脳裏を過ぎったから。
「ほらほら、そんなに見てたら都さんだって降りられないでしょう?
赤城、車をしまっておいて」
「承知しました」
わたしは慌てて車を降りる。
「お母様」
数歩先に進んでいたお母様が歩みを止めて振り向いた。
その周りにはずらりと、10名以上の組の者がいる。
それだけで、かなりの迫力なのにその真ん中を平然と通るお母様の存在感は、それすらも上回り、かつ美しかった。
……ま、まさかこの人たちわたしを待っていたわけじゃないわよね。
お母様を待っていたのよ、と自分に言い聞かせて落ち着かせる。
「だいたいの話は学校で聞いたよ。
大変だったね。今日はゆっくりおやすみなさい」
「あ、あの。
ありがとうございましたっ」
緊張で声が上擦る。
お母様の目尻が下がる。途端、柔らかい表情に転じるから不思議だ。
「どういたしまして。
明日にでも良かったら、話を聞かせて頂戴ね」
「はいっ」
緊張を強いることのない柔らかな口調に対して、わたしは不必要なほど力の入った声で答えていた。
「ほらほら、そんなに見てたら都さんだって降りられないでしょう?
赤城、車をしまっておいて」
「承知しました」
わたしは慌てて車を降りる。
「お母様」
数歩先に進んでいたお母様が歩みを止めて振り向いた。
その周りにはずらりと、10名以上の組の者がいる。
それだけで、かなりの迫力なのにその真ん中を平然と通るお母様の存在感は、それすらも上回り、かつ美しかった。
……ま、まさかこの人たちわたしを待っていたわけじゃないわよね。
お母様を待っていたのよ、と自分に言い聞かせて落ち着かせる。
「だいたいの話は学校で聞いたよ。
大変だったね。今日はゆっくりおやすみなさい」
「あ、あの。
ありがとうございましたっ」
緊張で声が上擦る。
お母様の目尻が下がる。途端、柔らかい表情に転じるから不思議だ。
「どういたしまして。
明日にでも良かったら、話を聞かせて頂戴ね」
「はいっ」
緊張を強いることのない柔らかな口調に対して、わたしは不必要なほど力の入った声で答えていた。


