だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)

「とにかく、こうして無事に帰ってきたのだから良いではありませんか。
子供たちも疲れています。
詳しい話は明日聞いて、それから結論を出してもよろしいんじゃありませんか?
まぁ、お宅の方針は存じませんけれども、当家ではそうさせて頂きます。
都さん、いらっしゃい」

お母様は有無を言わせぬ口調で一方的に告げると、何も言い出せない皆を置いて、赤いスポーツカーへと乗り込んだ。

「あ、あの、お母様」

まさか、ここにお母様が来ることになるなんて思っても見なかったわたしは言葉を詰まらせる。
正直言えば、さっきから心拍数もぐいぐいと上がっていた。

「あら、ちょっと待ってね、都さん。
私、車の運転をするのは本当に久しぶりなのよ。
さっきは、赤城に見てもらいながら出発したんだけどね、思い出すまで待って頂戴」

怒った様子も困った様子もなく、いつもの調子でお母様が言う。

「はい」

あら、ブレーキとアクセルって逆じゃなかったかしら?なんて言うお母様を辛抱強く見ている間に、お邸へと無事着いた。

「まぁまぁ、大の大人が雁首そろえて、どうしたって言うんだい?」

庭に入ると、適当に車を止めて降りたお母様の第一声がそれだった。

「都さんは?」

お兄ちゃんの声だ。

「はいはい、私が責任持ってきちんと無事に連れて帰りましたからね」

わたしは車から降りて、正直、どうすれば良いのかもよくわからなかった。