だって好きなんだもん！（Melty Kiss バレンタインver.）

「都さんも、泣いていいんですよ。
誰かに泣かないでって言われたんですか？」

どうして、お兄ちゃんはわたしが泣いてないことを知っているのかしら。

「だって。
泣いたら負けだもんっ」

「誰と何を戦っているんですか？
少なくとも、お兄ちゃんとの間にはそんな勝負はないでしょう？」

「だって……」

「じゃあ、泣いている顔は見ないって約束するから。
ね？」

わたしはくるりと振り向いてその広い胸に抱きついた。

「でも、子供みたいじゃないっ」

「そんなことないですよ。
大人だって泣きますよ、きっと」

「じゃあ、もしいつかお兄ちゃんが泣きたいときが来たら、わたしの胸で泣いてくれる？」

涙を溜めた顔をあげる。
お兄ちゃんはにこりと笑って、頷いた。

「ええ、約束します。
でも、私が泣いたことは都さんだけの秘密にしてくださいね」

「じゃあ、お兄ちゃんも秘密にしてよ」

「もちろん」

瞼の上に、唇が落とされる。
まるでそれを待っていたかのように、ほろりと。
ずっと我慢していた涙が、零れていった。