子供扱いされていると拗ねるわたしと、心臓が無駄にときめくわたしが同居して、どんな表情をしたら良いのかさえ分からない。


のに。

どうして、そんなに甘そうな笑顔を浮かべているのかしら。
これってまるで、乳児に食事をさせる母親の笑顔じゃなくって?


清水は、どこからどう見ても男でしかないのに。
何故か、そんな清水の姿から、見たことも無い母親のことをちらりと連想してしまい焦ってあけた口に、甘い苺がそっと差し入れられた。

とろんとした、甘いジュースと一緒に。
口の中に入ってくる、紅い小さな果実。

本物よりも少しだけ甘くって、少しだけほろ苦い。

「ねぇ、これ。
アルコール全部飛んでないんじゃない?」

噛み砕くほどもない紅い果実を、そぉっと飲み込んだら何故か頬が熱くなってきたのでそう伝えてみる。

驚いた清水がそれを頬張って、「あれ?」と首を捻るのは確かにこの目でみたような気もするし……。

もしかして。


もしかして、どこからか全部夢なのかもしれない。


チョコレートと、苺の匂いに誘われて。

わたしが見た夢だから、清水がお母さんに見えちゃったのかしら。

でもね。
そうだとしたら、これ。

最高の夢よ?

だって、わたしがお母さんの存在に想いを馳せることなんて滅多に無いし、想いを馳せたとき、切なくも苦しくも無く、ただ、甘く優しいと感じたのは。

おそらく、今が初めてだから。