だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)

「おばあさま?」

そういえば、わたしは清水の過去なんて知らない。

「あの頃は、時間がたっぷりあったので砂糖と一緒に鍋に入れてじっくり煮たんですけどね。
そんなに何時間もやっている暇は無いので、短縮版でやっちゃいましょう」

清水はわたしの質問には答えず、手際よく苺のヘタを取っていく。

大きな耐熱容器に入れて、日本酒を注ぎ砂糖を入れて電子レンジにかける。

「これだけ?」

「そう、これだけ」

「料理って、簡単なのね」

「そうですね、割と」

「また、教えてくれる?」

最近、受験勉強の終わってしまったわたしは、清水に何かを習う機会なんてなかったので、思わず瞳を輝かせる。

「もちろんですよ」

そもそも、キッチンに立ち入ること自体ほとんど初めてだもの。

「お兄ちゃんも、リンゴ剥くの上手だし」

「練習して見ます?」

「だぁってパパが包丁なんて持ったらダメっていうんだもの」

「……それは、厳しいですね」

「でしょ?」

パパは放任主義のクセに、時折何かを思い出したかのようにひどく過保護になるのだ。いつもここに居ないくせに。
いや、いつもここに居ないから、なのかもしれないけれど。
それをうんざりするほど知っている清水は軽く肩を竦めた。

諦めに似た空気がキッチンに漂う寸前、ピーという電子音が鳴る。