「クリスティーナと、シンは?」

気持ちを切り替えて、話題を替える。

「子供らしく無邪気に遊んでるよ。
逢いに行く?」

わたしはこくりと頷く。

小川くんの部屋で、クリスティーナとシンと一緒に遊んでいる間は、何もかもを忘れていられた。


出来ることなら、ずっとこうしていたいわ。

クリスティーナの柔らかい髪を撫でながら、半ば本気でそう思っていた。




夕食の時、清水はいつもと変わらぬポーカーフェイス、仕立ての良いスーツを纏ってダイニングに居た。
わたしは、食事が終わってから清水の傍に行く。

「ねぇ、一緒に登下校するのは無理だって、分かってくれた?」

コーヒーを飲んでいた清水が顔をあげた。
見慣れているポーカーフェイスに、軽く笑顔を浮かべているだけなのに。

どうしてかしら。
わたしには、清水の瞳がとても甘やかな光を宿しているようにしか見えなくて、無駄に鼓動が高鳴ってくる。

「いいえ。
それに、教室では全く目を合わせてくれないのも納得しかねます」

あ、あわせてるじゃない!
合った途端に逸らしてるけど!

「あのね、清水はとってもモテるの。分かる?
だから、清水と仲良しって思われたら厄介なことになっちゃうの」

思わず、声を荒げてしまう。

「それは、学校では都さんとはお話しないほうが良いということですか?」

どうして、表情を変えてないはずなのに、瞳の色に淋しさを宿せるの?
それとも、わたしの気のせいなのかしら。

胸の奥が痛くなって、頷くことさえ出来なかった。