だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)

「な、何?」

「ううん。急に走りたくなって」

目を丸くしている谷田陸に、わたしが口にしている言葉そのものがもう不自然の極み。
でも、そこは笑顔で誤魔化してみる。

「そう。でさ、清水先生ってあれだよね?
八色都の『家の人』だよね」

「……そ、そうね。親戚よ」

清水がそう名乗ったのだから否定するのもおかしな話で。
わたしは認めると、そっと唇を谷田陸の耳元に寄せる。

「でも、ほら。
なんか清水……先生って人気っぽいじゃん?
だから、皆からあれこれ言われると困るから、このことは二人だけの秘密にしてくれない?」

「……分かった」

こくりと頷く谷田陸に、ほっと胸を撫で下ろす。


とりあえず。
このときのわたしは、清水のことしか頭になかったの。



はしゃいでいたのかもしれないし、不安だったのかもしれない。
自己分析なんて、まだまだ子供要素が多すぎて無理なんだけど、さ。

とにかく。
清水のことで胸も頭もいっぱいだったから。

今、わたしと谷田陸を見ているクラスメイトが何を考えているかなんて。
ちっとも、考えなかった。

浅はかなほどに、1ミリも。