だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)

「よぉ」

谷田が、視線を自分のつま先に落としたままそう言った。

「良かったら、うちの人、迎えに呼ぼうか?
そうしたらきっと、谷田陸のことも送ってくれるよ」

そんなこと、考えても居なかったけど。
考える前に唇が動いていた。

谷田陸は首を横に振る。
そして、きょとんとした顔でわたしを見た。

「なんで、送迎?」

……そっか。
  谷田陸は昨日の記憶無くしているんだった。

わたしは、記憶を無くさない代わりに昨夜、お兄ちゃんとパパから東野が向組のものであったことや、向組が東南アジア一帯から小さな子供をただ同然で買い取って日本で売りさばいていたことについて聞いていた。

これだからヤクザは怖いって言いたいところなんだけど。
わたしが知らないだけで、きっと、銀組だってやっていることは大差ないんだと思うと、何も言えない。

「ううん、なんでもない。
歩くの面倒だったから」

むしろ、わたしが怠惰な小学生じゃない、これじゃぁ!

「変なヤツ」

くすりと、谷田陸が笑った。
いつもよく見せる、無邪気な笑顔にほっとする。

「変で悪かったわね。
じゃあ、どうしてここに?」

「あのさ、清水先生って」

わたしは慌てて谷田陸の手を引っ張った。
いくらなんでも、こんなに人が居るところでその固有名詞は出さないで欲しいんだけどっ。