授業が終わったら、清水からメールが来た。

『一緒に帰りましょう』

いやいやいや。
あのね?
無理だから、それ。

朝はまさかこんな展開になるなんて予想もしてなかったから、助手席に遠慮なく乗らせていただきましたけど?


誰かに目撃されたらどうするのよっ。

わたしはトイレの個室でメールをチェックして、一人言葉を呑むほか無い。

そりゃあ、清水にとって見ればうちのクラスメイトなんてわたしも含めて、「興味の無い小学生」でしかないんでしょうけど!

皆、あんなに夢中だった東野のこともあっという間に忘れるほど、清水に夢中なのよ。
お願い、気づいて。

なんか、パパがいつか『清水って本当、鈍いところあるから』ってお兄ちゃんにぼやいていたのを聞いたことを、ふっと思い出してしまったじゃない。

そのときは、清水って何でも器用にこなすのに、何が鈍いのかしらって疑問に思っただけだったんだけど。

もーしーや。
女子の視線に鈍いってことなのかしら?

そりゃ、お邸ではオールバックだし、あの冷たい雰囲気だから、普段は気づかれないと思うよ。わたしでさえ、同一人物には見えないなって何度か思ったもの。

でも、今、その<教師用>スタイルを携えてわたしと一緒に帰ろうとしてますよね?

『あのね?誰かに見つかったらどうするの!絶対に無理だからっ』

焦る顔文字を多用して作ったメールを送信する。
普段の清水には、絶対に顔文字を入れたメールなんて送信しないんだけど。