だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)

――翌朝。

清水が驚くほど普通のスーツを着ていたので、わたしは目を丸くする。
なんていうか、生地が薄いというか。
重厚間がないというか。

「都さん、学校に行きましょう」

送ります、ではなく。
行きましょう、と確かに言った。

促されるままに、普段より早めに登校し、教室で時間を持て余していた。
普通どおりの時間にやってきた谷田陸が、はにかむようにこちらを見て微笑んだのが印象的だった。

とにもかくにも、元気そうで何より、と。
わたしも笑いかける。



「おはよう」

――わたしは言葉を失った。

教室に入ってきたのは、東野ではなく。




あの、普段よりはずっとグレードの低いスーツを身に纏った、清水、だったのだから。

東野とはまた違う、大人の魅力を持ったイケメンに女の子の目はたちまちハートマークになっていく。

そんな浮ついたざわめきなど気にも留めないように、お邸なんかでは見せたことの無いような営業スマイルを浮かべた清水は

「本日より、こちらのクラスを担任する清水英明。
短い期間だが、よろしく」

と。

いかにも教師らしい一言目を述べて、わたしの目を丸くさせていた。

……パパが言ってたプレゼントって、ねぇ。
  清水を教師にしたことだったって言うの?