だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)

部屋を閉めて、離れから母屋へと帰る。

わたしは黙っていたのに、パパは敏感にこの持て余した気持ちを感じ取り、手にしていた医療グッズをお兄ちゃんに渡すと、遠慮も躊躇いもなしにわたしの肩を掴む。

疲れたときに、無性に甘いものが食べたくなるように。
こうして、どうしようもなくパパに甘えたくなることがある。

お兄ちゃんは一緒に寝てくれなくなったけれど、パパはそんなことはなくて。
小さい頃からそうしてくれていたように、ぎゅうとハグするとそのままお姫様抱っこしてくれた。

「怖い思いをさせたね。
でも、もう大丈夫。
あいつらはちびっこを追っては来ないよ。
心配しないで」

発言の9割以上が冗談で成り立っているようなパパなのに、こうして低い声でそっと耳の傍で囁かれるとそれがあたかも真実に聞こえて、安心を覚えるからすっごく不思議。

「でも、東野先生はどうなるの?」

だって、あれはうちの担任。

「ん~。先生、ねぇ」

パパは唐突に、いたずらっ子の目になって、それからふわりと唇を緩ませた。

「それはもう、パパから都ちゃんにとびっきりのプレゼントをさせてもらうよ。
今日、辛い目にあわせてしまったお詫びも兼ねて」

意味ありげな言葉。
でも、それ以上は教えてくれなかった。