だって好きなんだもん！（Melty Kiss バレンタインver.）

入れ違いのように男の子が走ってきた。

「シン　スキ」

それからわたしの返事も聞かずにやっぱりパパの後ろに隠れてしまう。

「どうしてパパの方が懐かれてるのよっ」

わたしは納得が行かなくて唇を尖らせる。

「そんな顔したら怖がるでしょう？」

そして、パパはそれぞれの国の言葉をわたしに教えてくれた。

「わたし、都よ。わたしもクリスティーナのこと大好き。早く元気になって一緒に遊ぼうね」

シンにも同じことを、今度は中国語で告げる。

こくりと元気良く頷く二人にほっとした。

「紫馬さん。
都さん、今起きたばかりなんで食事に行って来ますね」

「ああ、じゃあ私もご一緒します。
小川くん、二人のこと宜しくね」

「はいっ。
紫馬の頭！」

小川くんはごつい身体なのに、パパの言葉にまるで萎縮したように返事をして敬礼までしていた。

……な、んで？

いつものことながら、パパが他人を懐柔する様は本当に見事だと思う。
警察も、敵も、もちろん銀組の人たちだって、飄々と笑っているだけのパパに向かって刃向かって行く人なんて見たことが無い。

「お前のカシラじゃねぇよ」

パパは面白そうに言い捨てて、唇の端で笑っていた。