「そうですね。
早く治るといいですね」

お兄ちゃんが、そっと頬にキスをした。
これくらいなら、うん。
平気。

「あんまり近づくと、移るよ?」

「いいんですよ。
移っても。
それで都さんが治るなら、お兄ちゃんはちっとも構いませんよ」

優しい口調は、清水のそれに良く似ていた。

でも、違うの。

……どうしてかしら。
  どうして?

わたしの頭は清水のことばっかり考えちゃうの。
目の前にはお兄ちゃんが居るのに。

「都さん、大丈夫ですか。
顔色が良くない。
ゆっくり休んでくださいね。
今夜は風邪だから特別に、寝付くまでここに居てあげる」

そうよね。
風邪なんだからしょうがない……のよね。

きっと。

わたしはふわふわする気持ちに名前もつけられないまま、引きずられるように眠りに落ちていった。

お兄ちゃんの、腕の中で。
清水のことを想いながら。