だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)

「都さん」

一人になって細い道に入ったところで、後ろから声をかけられてびくりと身体が跳ねた。

「……清水、さん」

足を止めて振り向いて、その声の主が間違いなく清水であることを確認する。
直後。
わたしはふわりと清水の腕に抱き寄せられた。

「……し、みず?」

お兄ちゃんやパパに抱き寄せられるのが慣れているわたしにも、これは未体験のことで思わず目が丸くなる。

「こうやって、あっという間に浚われますよ?」

耳に注がれる言葉は静かだけれど、その声は確実に喜怒哀楽で言えば、<怒>の色に染まっていて、わたしの指先は勝手に震えだす。

確かに、清水に捕まった身体はちっとも動かない。
これが、悪意を持った誰かだったら。

わたしはいとも簡単に浚われてしまう。

「……ごめんなさい」

「どうして逃げたんですか?」

わたしの謝罪を受け入れるつもりのなさそうな声で、問い詰めてくる。
わざわざ死角に入り込んでからわたしを捕まえるあたりにも、彼の用意周到振りがうかがわれて、背中がぞわっとした。