だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)

パパはゆっくりと顔をあげた。
その仕草は、テレビのカメラが意図的にズームアップしていくような、何かしらの効果を狙っているようにすら見える。

もっとも、焦って中に入るようしきりにすすめている東野先生がそれに気づいているかは定かではないのだけれど。

ゆっくりと先生を見るその視線には、いつもの飄々とした色も、危険で危うい色もなく。
ただ、娘の件でひたすらに詫びている、子煩悩で若い父親の雰囲気だけを醸し出していた。

「良かったら、中でお話でも」

「都はどうする?」

わたしは驚きの声を上げそうになった。
パパがわたしのことを呼び捨てにするなんて、ありえないんだもの。

しかも、これはまるで『わたしが夢にまで見た父親像』じゃないっ!!
つまりは、普通の極丁寧なサラリーマンやってそうな父親ってことよっ。

ううっ。
パパのこんな姿が見えるなんてっ。
夢みたいだわっ!

言葉が出ないわたしのことをパパは先生に

「この子、今日は学校に行きたくないと言っていたのを無理矢理連れてきたんです。
先生もご承知おきの通り、来週、中学受験を控えていますから、差し支えなければしばらく保健室への登校で勘弁していただけないでしょうか?」

などと、流暢に紹介している。
とても、即席の作り話には思えないほど完璧な口調で。

うーん。
昨日熊とライオンのふざけた話を聞かせてくれた人と同一人物だとは思えないわー。