だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)

「ねぇ。どうしてこんなに仰々しい車なの?」

学校の近くに行くと、周りの視線を感じて痛いんですけど。
もっとも、窓ガラスにはスモークが貼ってあるから、直接視線が絡むわけじゃないんだけど、ねぇ。

「防弾ガラスだから。
危ないじゃない?ズドンって撃たれたときにさ、こっちもピストルを取り出すくらいの余裕がないと」

何食わぬ顔でパパが言う。

「だって、学校に行くだけなんでしょう?
わたし、5年以上通ってるけど一回もピストルなんて見たことないわよ」

「ほら、初めて見るのが今日かも。ね?
宝くじだって、案外ずっと当たってない人が突然当たるんだからさ」

宝くじが当たるのと、ピストルの弾が当たるのとを同じ次元で語るのは、どうかと思うんですけどねぇ。

「こちらでお待ちしておきましょうか?」

躊躇うことなく来客用スペースにセンチュリーを止めながら赤城が言う。

「よろしく~」

軽い口調でそう言うと、パパは車を降りる。
わたしは結局皆の視線を浴びながら、車から降りるハメに陥った。

慌てて駆け寄ってきたのは、東野先生。
そりゃ、わたしが降りてくるんだからパパのことだって誰か見当は着くわよね。

「あの」

「娘の担任の先生ですか?昨日は娘がご迷惑をおかけしました」

わたしは目を丸くする。
あのふざけた姿しか決して見せない紫馬宗太が、まるで自動車のセールスマンかのように丁寧に頭をさげているんだもの。

「い、いえ。
とんでもないです。
こちらの監督不行き届きという面も多分にありますし。
どうぞ頭を上げてくださいっ」

まだ若い東野先生は、焦っているのか呂律がきちんと回ってない。