暴れ牛の件からしばらく経って、
季節は雨季。

魔王さまの領地では、

形ができあがった畑の土が、
雨の雫をたっぷり吸い込み続けている。

「この雨の季節が過ぎたら種まきだったな?」

「そうです。魔王さまも一緒にまきますか?」

扉の内側で会話する2人。

「手伝って欲しいと言うなら、手をかしてやる」

「はい、手伝ってください」
「素直だな」

魔王さまは、少しだけ尖った歯を見せて笑う。

「それから鍋が温まったら教えてくださいね」

「もうしばらくだ」

魔王さまは、自分の膝に乗せた鍋を見下ろす。