ノコギリの後を追って宙に舞うおみくじ。

耐え切れず口を開いたせいで、また舌を噛んだ。
とても痛い。

が、ここでなんという奇跡。

そのおみくじの角が、シルキスに頭突きをかまそうとしていた牛の目にあたった。

「ぱおーん」

親牛がどのくらいでかいのか、
これで分かる鳴き声。

目を傷めた牛はシルキスの横を通りすぎ、シルキスはこのチャンスを

生かしきれずに他の牛に飛ばされた。

「ぱおーん」

悲しい男。

シルキスは泣きながらノミとハンマーを出す。

泣いていても、地面を転がりながらたまに牛達の額にヒットさせるのが凄い。

それは見かたによっては正面衝突ともいうのであれだが、

どさぐさまぎれにまたひとつ尻尾を落とした。

子牛のだけど。

残り親牛6、子牛1。

この間、ロープと石も使っている。
どう使ったかは二言。

投げた。
外した。

幸い、ノミとハンマーはまだ両手に残っている。

両手がふさがったまま使ったから、外したのではないかとは疑ってはいけない。

本人は、すでに号泣レベル。
だがそれでもまだ立ちあがる。

ぶつかればしがみつく。
飛ばされれば、牛の背に着地を試みる。

泥仕合。

徐々に、
徐々にだが、牛の方の息があがってきている。

一方、シルキスの息は止まる寸前だが、身体は動いているので無問題。