尻尾を落とされた牛は、その場でよろよろ。
そして大人しくなる。

よかった。
暴れ牛マスターの知識が間違ってなくて、本当によかった。

その他の牛は、当然反転して転んだシルキスを狙ってくる。

素早く立ちあがるシルキス。

強くとも所詮は牛。
同じ手であと2~3頭はいける。

と思ったら、
想定外の後ろから思い切り突き飛ばされた。

子牛のことを忘れてた!!

やばいと思ったときは、一瞬。

次の一瞬でシルキスは5~6回お手玉された。

「ああ~~~」

とか叫んでいるのは、遠くで見ている人達。

飛んでる本人にそんな余裕なし。

形見だか秘蔵だかの包丁は、遠くに弾かれて見えなくなってしまった。

さようなら包丁。
次に見つかるのは戦いが終った後。

もしかしたら、
最後の一頭あたりで逆転の切り札になって拾いあげるかもしれないけど、その時はよろしく。

だが僕には、相棒のクワがある!!

シルキスは空中でクワを掲げる。
が、そのクワも飛んでった。

包丁が持っていられないのだから、バカ重いクワはもっと無理だった。

ピンチ。
こんな体勢では見えないが、背中と腹に軽めの穴が開いてるような気がする。

貫通はしてないが、血は出てる。