自慢の鋼のクワ2号を持って、
シルキスが開墾地に出向くと、

開墾仲間が一様に困った顔をしていた。

「どうしました?」

訊ねるシルキス。

「あれだよ」

仲間のおじさんが指差す先。
皆で頑張って拓いた土地。

土の一掴み、
柵のひとつひとつ、

深くつけられた足跡や、
誰かの子供が遊びでつくった落とし穴にも、

汗と感動のドラマがある。

その大事な土地の開拓最前線部分。
えらく立派な体格の野生生物が入りこんでいた。

通称、野良牛。

生物的にはちゃんと品種名があるのだが、
そんなのでやつらを呼ぶ人間はまずいない。

そして、もうひとつ。
もっと分かりやすくて役に立つ俗称がある。

「暴れ牛ですね」
「ああ、暴れ牛だ」