「本当に好きですよ、魔王さま……」
「うむ」

「それで、魔王さま……」
「なんだ?」

シルキスの、かすれていく声。

「すみません……、少し、眠ります、ね……」

魔王さまの頭を抱いていた手がゆっくりと落ちる。

「待てっ、おいっ」

魔王さまは、シルキスを揺さぶる。

だが、シルキスは目を閉じたまま、目蓋をあげない。

「待てっ、シルキスっ」

なんど揺すっても起きない。

優しい笑顔を魔王さまに見せたまま、

壁にもたれた背中がずるりと横向きに崩れて倒れ……、

「待てと言うのが聞こえんかっ!!」

る前に、魔王さまのマジ頭突きが鼻に入った。

「あうっ、あうっ、あうっ」

顔を抑えて転がるシルキス。

「唇を奪ったとたん、おねむとはいい度胸だ」

「いや、本当に眠いのです。休憩させてください。5分」

この世界の時間単位が分でいいのか疑問だが、魔王さまのお叱りだ。

「敵兵がごろごろ転がっているところで私をひとりにする気か?どいつか起き上がってきたらどうするつもりだっ?」

「その時は、それくらいの大声で起していただければ」

「あほうっ」