返事はない。

「魔王さま~」

もう一度揺らす。
やはり返事はない。

「はっ」

思い出したが、この扉は音を通さない。

魔王さまを呼ぶには、合図を決めておく必要があったのでは?

やばい……。
血以外のものがダラダラと出てくる。

魔王さまには、自分が呼ぶまで出てくるなと言ってしまった。

この非常時だ。

普段言う事を聞かない魔王さまが、
ずっとシルキスの言うことを聞いて出てこない可能性がある!

「むむむ」

蹴り壊すという手も残っているのだが、それをやるためには体力が……。

シルキスは、知恵と体力を絞り出すために扉横の壁に背中をつけて休憩。

足元に倒れていた人達は、邪魔だったので適当に離れたところまで蹴り転がしておく。

大丈夫、本当に死にそうだったら勇者ブレーキが働く。