魔王さま100分の1

果樹園は、シルキスが想像してたより遥かに立派だった。

荷馬車が余裕もってすれ違える幅で均された道の両側に、整然と厚く植えられた樹木。

栗以外の木もたくさん植えられており、果樹園の中ほどまで入ると、

目の届く範囲すべてが木の列で埋まり、端が見えなくなる。

どの木も瑞々しい。色とりどりの実をつけている。

シルキスが果樹園で働く人達を見かけ、買った栗と女将のことを話すと、機嫌よく木々のことを教えてくれた。

「これからが収穫の本番だよ。夏が終ったらまたおいで、冬になるまでにね」

夏が終ったら冬。

その間の一時の過ごしやすい時期を農作物に関わる人達は、そのまま収穫期と呼ぶ。

収穫期には、シルキスもなじみの農家の応援に出る予定。

シルキスがそのことと開拓地のことを話すと、果樹園の人達はますます機嫌をよくした。

そのとき、上空から響く大きな羽音。

シルキスは、空を見上げる。