「シンヤ?お前、シンヤか?」


ずるずる引きずられながら、彼女は僕の名前を口にした。


僕は必死にうなずいた。


彼女がナース服でなければ、男と間違うほど短い髪の毛だった!


そのままドカッとエレベーターに押し込まれると、彼女(たぶん)は有無を言わさず屋上ボタンを乱暴に押した。


僕はなんだか気が抜けて、そのまま地面にへろへろとへたりこんだ。


よし、落ち着け、俺!


「えーと、聞きたい事はたくさんあるんですけど…とりあえずあなたは、誰?」



「リコ…宮村、莉子」


ぶっきらぼうに腕を組み、エレベーターの壁にもたれかかりながら、彼女はそう言い放った。


「つーかさ、あんたがシンヤなわけ!?うーん、なんか若いっつーか、ひょろいっつーか…マジで大学生なわけ?」


顔を近づけて全身を舐めまわすようににらまれた。


「あの、リコさんて、もしかして…あの、アコさんの…」


「そう姉妹だよ、しかも双子の。」


や、やっぱりか!え、ふ、双子!?


「てめーが今何を思ったかはなんとなく推測がついたぞ。アコのために一応言っておくが、性格は似てないから。」


「それに、アコはまだ髪の毛は長い」


「まだ…?」


「まっ、いーからほらっ」


引っ張り出された病院の屋上からはさっきの海が見えた。


「いーだろ!」


そう言うとリコはタバコを取り出し、火をつけた。


「まー潮風のせいで洗濯もんとか砂まみれになっちまうからなーんも干せねーのがこの屋上唯一の欠点だなー」


ふうっと僕にわざと煙をはいた。


「吸う?」


「い、いえ。僕吸えませんから…」


「うーん、莉子さんはがっかりだなぁ。あんまりだ、あんたみたいのがシンヤだなんてさぁ」


「ゲホゲホッしっ失礼な!!」