― ある日の夜 ―


私は、圭介の家に居た。


暫く圭介の仕事が立て込み、お泊まりはお預け状態だった。

その仕事も、今日でメドがつきユックリ出来ているというコトだ。

「ねぇ、ワインあるけど飲む?」
圭介が、ワインをキッチンから見せた。


「あっ…、うん」

「あれ?恭子、ワイン苦手だっけ…」

「あ…。そんな事、ないよ」


圭介は、不思議そうに私の顔を見てから、ワインとグラスを二個キッチンから持ってきた。


ワインには、淳也との思い出がある…

それは、嫌な思い出がフラッシュバックする、一つのアイテムだった。

他にもある。
その人専用の着信音だったり、その人が好きだった曲や、自分の好きな曲を一緒に聞いたり、好きな食べ物、映画、芸能人とか…


別に、ワインが悪いとか、曲が悪いとかじゃなく、自分がまだその思い出を消化出来ないままでいる、私自身が悪いのだ。


嫌な思い出は、何時まで私に付き纏うのだろうか…