とても辛そうな悲しそうな顔…
それは夏の蒼い蒼い空に揺れている。
咲さんの…あの頃よりずっと伸びた綺麗な髪の毛が風に揺れている。
あの頃よりも、ずっと綺麗な…咲さんだった。
『あ、あ…あたしじゃ駄目です…』
そんな咲さんを見たら、嫌でも現実が見えてしまう…
『夕陽ちゃん?夕陽ちゃんはいったい今まで大斗の何を見ていたの?』
困ったような顔で問いかける。
何を…?そんなの決まってる。
『咲さん、を世界で一番大切にしている大斗…を、見てた…』
すると大きなため息を吐かれてしまった。
『夕陽ちゃんは大斗の事、何にもわかってない』
知ってる。
そんなの知ってる…
『あたしは…咲さんじゃない…わかるはずない…』
なんて情けない言葉なんだろう…
でもいつも思うのは、そんなことばかり…
踏み出せない…
『夕陽ちゃんのバカッ!!!』
咲さんはまた大きな声をだした。
『当たり前じゃない!?大斗とあたしが過ごした時間には誰にも入れない。』
『知って…ます、わかって…ます』
だから…だからあたしは…
『だからあたしは…咲さんになれない…大斗の事…わからないもの…』
『なれないって事は…夕陽ちゃんは、あたしになりたいの?』
咲さん…に?
そんな事できるはずない…
『咲さんとは…違う。関係を言葉にしなくても存在する、そんな愛なんてあたしにはないもの…』
『愛…って、夕陽ちゃんは大斗の事…』
それを遮った。
『あたし…大斗とずっと友達でいたい…。』
弱弱しく言っていた。
『なりたいの?』
『へっ、、、?』
あたしの答えなんて聞いていないかのように再び問いかける咲さんにかなり間抜けに呟いてしまった。
『なりたい?』
繰り返すその声は優しい。
なりたい…?
それは…
咲さんみたいに綺麗だったら…
咲さんみたいに大きな力があったら…
あたしだって
大斗の傍にいたい…

