大斗が言った通り、雨は上がったのに…
屋上に上がれるから嬉しいはずなのに…
嬉しい…?
どんより…。
今にも泣き出しそうな空…
違う…
だって、雲の隙間から太陽が見えるもの…
どんよりと…
泣き出しそうなのは…
あたし…?
夕陽は4階へ上がる階段をゆっくり上がって行く。
その時だった。
『せん、ぱい…』
夕陽の耳に届く声。
『好き、好きなんです』
な、ほちゃん…?
そう思って4階の踊り場から顔を上げた。
夕陽のいる場から階段を少し上がった屋上の扉のすぐ前、
そこに大斗と菜穂はいた。
『大斗先輩が忘れられない…』
なんでここに…いるの?
『先輩の事…忘れられない…先輩の…』
バッと菜穂は大斗に抱きついた。
夕陽に見えるのは大斗の背中。
身体が動かなくなった夕陽。
『好きなんです…あの時みたいに抱いてください』
聞きたくないっ
菜穂は背伸びをして大斗の首に腕を絡める。
あ…
その菜穂と目が合ってしまった。
夕陽に気付いた菜穂は大斗の肩越しから夕陽を見て笑う。
嘲るように…
夕陽は菜穂に見下ろされているようになっている。
大斗は背中を向けているので夕陽が居ることには気付いていない。
夕陽は踵を返す…
でも遠くまでは行けない。
見たくない。
聞きたくない。
でも動けない…
2人には見えない影で立ち尽くす。
『ふっ』
大斗が笑う声が夕陽に聞こえた。
『先輩…?』
『あぁいいぜ?別に抱けるよ。』
大斗…?何を言っているの…?
『興味ねぇよ?』
トーンの低い大斗の声。
ふっ。とまた笑い大斗は菜穂を身体から離す。
『でも、お前なんか全く興味ないけどね。俺、SEXなんて誰とでもできるし』
『じゃぁ…先輩にとって…咲さんは…』
ダンッ!!
菜穂が立つ壁に大斗は手を付く。
夕陽には音と声だけが聞こえる。
『うるせぇ!!』
うるせぇんだよ、てめぇ

