「俺の秘密の鍵♪」


確か…

前に海の後、拓ちゃんと話す時に貸してくれたのと…

同じ…。


屋上の鍵…??!



夕陽はタッと走り出した。



パタパタ渡り廊下を通り抜け、空き教室を過ぎる。

いつも通る道。


窓からは少しだけ新芽を膨らませた、まだまだ葉のない桜の木々が聳え立つのが見える。


ドキドキ ドキドキ…


なぜだかいつもと同じなはずなのに…

なんだか緊張する…!!


短い階段を駆け上がり普通の家のモノより少し大きなその鍵を挿し込んだ。


カチャ。


ドアを開ける。


『遅くね?』


それと同時に聞こえる声。

『大斗…これ…ー!』


大斗は寝っ転がったまま振り向かずに続ける。

『気付くのおそー』

来たのが夕陽である事は意図も承知と言う様子。

夕陽は大斗の傍に来て腰を降ろす。


『合鍵やるよ♪今更だけど』

『いいいつ入れたの?』

『あっさー』


あ…、朝の近寄ってきたとき…?


チョコレートのお返し…だよね?


『お前、実は屋上の鍵より俺ん家の鍵が良かったか♪?』

いつもみたいに大斗はにやにやと茶化してくる。

『バカ!!』


ちょっとだけ赤くなって返事をしたっ…

大斗は寝っ転がったままだったから…

あたしの顔は見られていないと思う…


『ありありありがとう…』

大斗はフッと笑っていた。


『俺、だるいから今日はこのまんま早退する。』


そして「鍵締めとけよー♪」と機嫌良く屋上を出ていった。


何よ、あたし来たらすぐ行っちゃったし…

独り残していくわけね…

って…今まで、あたしが来るまで待ってたり…とか?

いーや、まさかね…

あるはずない…か?


夕陽は自分で思ったことを自ら否定したけれど、案外外れてもいないようで…

大斗は少し赤い顔をして校舎を後にしていた。


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―♪―♪―♪―


―新着メール。戸塚君―


[今日、放課後遊ばない?ホワイトデーにご飯ご馳走させて(^o^)]