大斗が何か言おうとすると彼を呼ぶ声に遮られてしまった。
パッと声の方を向くと、階段の上に女の人が立っている。
『もう仕事終わり?』
声をかけてきた女の人は、綺麗に着飾っている。
当たり前の範囲だが、ちょんまげの夕陽とは見るからに違う格好だ。
『あーそう…』
大斗は軽い返事を返した。
『もう帰るなら少し遊ばない?』
女の人はそう言って夕陽を見て
『その子…大斗君の連れ?』
と呟く。
言葉の中には「何て格好…」と卑下した驚きが入っている。
…何かっあたし、異常に居たたまれなくない?
自分を見られていることに気付いた夕陽は途端に気まずくなってしまった。
『そうだけど』
と大斗はその人に言うが、
『あたし、何でもないですから、行きます』
夕陽はそう言うと階段をかけ上がる。
『おい!!』
あーもう嫌っ!!
こんな格好で?!
無理やり連れてこられた挙げ句っ!
わけわかんないうちに「帰る」だしっ…
極めつけにっ!!
あの女はなんなんだーっ!!
大斗はあたしをバカにする為に呼んだわけっ?
適当な格好で出てきたのはあたしだけど…っ!!
でもムカツク…!!
『夕陽っ!!』
通りに出ようとする夕陽の背中に大斗の声が聞こえた。
夕陽はタクシーを停めると振り返り叫んだ。
『大斗の、あんぽんたん!!』
車に乗り込むときに、さっきの女の人が大斗に追い付くのが見えた。
ムカツクッムカツクッムカツクムカツクッ!!
夕陽はイライラしながら家に帰ってしまった。

