「ちょあっ!……くっ、くすぐったい……!」
優司はそのままくすぐり攻撃に入った。
私は笑いを堪え切れなかった。
抵抗しようにも、両手を頭の上で掴まれ身動きができない。
なんか、エロいんですけど……!
優司は私の弱点を知っている。
いきなりギュッと抱きしめたと思うと、つうー、私の背筋を指でなぞってきた。
「!?」
ビクッと身体が跳ねた。
「中学ん時からここ弱いもんねー辻」
語尾にハートマークを付け優司が囁く。
中学時代、友達と背中に指で書いた文字を当てるゲームが流行ったことがある。
自分もそのゲームに参加したのだが、くすぐったい上変な声を出すことに気付いたのだ。
それが男子たちのツボにはまり、卒業まで面白がられた。
抱きしめられながらのこの攻撃は、逃げられなくて厳しい状態。
再び優司は背筋でなぞっていく。上から下へ、下から上へと指を滑らせる。
「ゆ……じく……やぁッ」
「辻がエロい声出してるー。ここ感じちゃうんだ」
「……違っ、あぅ……ん……」
変な声とはいわゆる「喘ぎ声」なんだと、いまさら気付く。
全身の力が抜けていく感じだ。
優司の腕の中の心地よさ。
優司の指の感覚。
ゾクゾクする。
――これが「感じる」ということ?
締めはやはりくすぐり攻撃だった。
私が笑い疲れ、死にそうになった頃、優司はやっと手を止めた。
どうやら眠くなったのだ。
優司は甘えるように私の胸に顔を埋めた。
先程のくすぐり魔と同一人物とは思えない弱さで、私の背中に手を回しギュッとする。
とても愛おしくて、私は思わずそれに応えるように、優司を抱きしめた。
「辻って、抱き枕にいいと思う……」
彼に必要とされているのは嬉しかった。
「抱き枕」ではなく「彼女」と言ってほしかったけれど、優司の体温がその思いを飲み込ませてしまった。
ひとりの女として、私を見て。
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