手元が震える。


あと1回ボタンを押すと、優司に繋がる。



ケー太くん、どうか優司を起こしてください……!




ケー太くんというのは、私愛用のケータイである。

何ヶ月も使っていると愛着が沸くものだ。

歴代の携帯電話に「ケー太くん」、中学入学時から使っている自転車に「チャリ夫」と、私の相棒だ。





さて。
今日は初めてのモーニングコールの日だ。
緊張はドマックス。

目覚ましを何個使っても起きない優司が、果たして私の電話で起きてくれるのか。



勇気を振り絞りボタンを押した。

耳元で優司に繋がる機械音がする。



しばらく経つとブチッと音がして、雑音が入った。


そのあとか細い声がした。


「もしもーし……」

「もしもし?」

「もしもし…」

「もしもし」

「もし「何回『もしもし』言うんだ」



朝っぱらから変な突っ込みだ。すかさず優司が言い訳する。



「だって眠いんだもん…」



…………


朝からキュンときてしまった。

可愛い。
寝起きの優司はとにかく可愛い。



こんな優司を知ってるのは、私だけなんだなぁ。


そう思ったら、一発で起きてくれたことよりも、もっと嬉しくなった。